- 過去『MOBILE SUIT GUNDAM 0080 ポケットの中の戦争』の設定制作や『∀ガンダム』の企画制作として参加し、最近では富士急ハイランドの『ガンダム・ザ・ライド』のプロデューサーを務めたサンライズの堀口滋。自身が関わったガンダム作品について、サンライズ社内スタッフという立場から意外な裏話が語られる。そして、そんな堀口の目に映った『GUNDAM
OFFICIALS』とは?
■ご自身のガンダムへの関わりは?
- 当時は5人の同人グループだったんですけど、コミケで井上さんに見つけられて、アルバイト扱いで『蒼き流星SPTレイズナー』の企画にアイデアを出したり、『機動戦士Ζガンダム』のモビルスーツにアイデア協力をしたりしていたんですよね。メタスやバーザムのラフを描いたりもしましたし、ずっと後ですが『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のフィン・ファンネルのアイデアラフも描きました。
それで、設定制作としてOVA『宇宙の戦士』で初めて現場に入って、その次の作品が『MOBILE
SUIT GUNDAM 0080 ポケットの中の戦争』ですね。それからずっと『ガンダム』以外の作品の現場にかかわってきていたのが、『ガンダム』としては久々に『∀ガンダム』で企画制作的ポジションで参加できることになったんです。以前、別の企画用に描いていたラフが富野監督の目に留まったからなんですけど、たとえば「月に運河が流れている」という設定とか。まあ『∀ガンダム』に出てくる「運河」の設定をしたわけじゃなく、そういうものがあるという提示をした形ですけどね。
大変だったというと、たとえば監督のリテイクに関して、無駄を省くためにはグラフィックで説明しないと難しいんですね。日本人のメカデザイナーが相手だったら言葉だけで通じるんですけれども、ガンダムって非常にテクニカルな専門用語も多いですから。たとえばスラスターと言う英語はわかっても、それがガンダム世界ではどんなものなのかわからない。中には英語としては間違った使い方をしているものもありますし(笑)。だから、F15イーグル戦闘機の外板のつなぎ目であるとか、モーターサイクルのフレームが外部に露出している部分だとか、そういう共通言語を探さないとガンダムの専門用語で言っても一切通用しない。
だから、直接の打ち合わせだと私がガンガンラフを描くかたわら、ミードさんも目の前で描いてましたよ。
■『ガンダム・ザ・ライド』へのスタンス
- 『ガンダム・ザ・ライド』をやるにあたっては、まずどっちの道を選ぶかというがありました。ストーリーやデザインを全部新しくしちゃうのか、今までの作品に出てきたものをふまえて描くのか。実際、新しいデザインを作りたくもあったんですけど、そこはこらえてなるべく公式のものを探す、茨の道を選びました(笑)。たとえば、ジオングと戦っているときのガンダムはバズーカを2本持っているはずなので、なるべくそうしたい。でも、真っ暗な宇宙空間ではバズーカの弾が飛んでいても見えないから、やっぱビームが撃ちたい。近藤信宏監督からも、音響的にもスピード的にもビームを撃つ演出がしたいという声が出てくる。でも、ジオングとの戦いでガンダムはバズーカを撃っているはずなんですね。最初はバズーカを使って、それがなくなってからビームライフルを使う。それはちゃんと富野さんがア・バオア・クー戦でガンダム1機が倒せる許容量を増やしているわけです。アムロの戦闘能力がすごく高くなって、無駄弾を1発も打たずに戦っているということを表しているんですよ。けど、やっぱりビームじゃないと見えない。そこで、ライドではガンダムはシールドの裏にバズーカが2本備わっていることにしたんんでそんなことをしなきゃいけないんだとCGチームに言われながら、よけいな負担だとわかっててそうしたんですが……上がってきたフィルムを見ると早くてわからないんですよ。アハハ。でも、やっぱり『ファーストガンダム』で、あのシーンに込められたいろんな意味を解釈していったとき、過去のフィルムにあった事実に前向きに立ち向かわないといけないわけです。大変ですけど。
逆に、新規のものは嘘も作ってるんです。あのザクレロも肩についてるハートマークが違っていたりするんですよ。じつはこれ、MSVあたりでキマイラ隊というのがあるそうで、ゲルググとかを運用していた。そういう史実をリサーチしたうえで、ここがザクレロを使っていてもおかしくないと裏付けを取っているんですよね。
まあ、なぜザクレロかというと、それはライドだから(笑)。世界的にシミュレーション・ライドって、深海が舞台のものが多いんですけど、定番でまず大きな魚にパクリと噛まれるんです。そのお約束を踏まえるうえで、噛むといったらザクレロでしょうということになったんですね。これに関してはあまり裏付けになってないかもしれませんが(笑)。
ほかにも監督の近藤さんがア・バオ・クーに近づけるときの距離感をごまかすため、最初はドロスを出そうと思っていたんですが、「ホワイトベース隊がいた空域にはドロスはいません。ドロスがいるのは反対側のフィールドですので、ジオングと会うのもやばいかも知れません」と指摘されたんですね。それでどうしようと悩んでいると、今度は「ドロワというのがセリフだけ出ています」という声が(笑)。ただ、これもギレンが死ぬ前に沈んでいるので、それまでに出さなきゃいけない。アムロとジオングの戦いも近藤監督の演出意図ではドロワを抜けたあとに見せたほうがいいんだけど、時間的におかしいからドロワの前に見せることになってるんです。
適当に好き勝手やればできたんですけど、最初の選択で「ガンダムファンに対しての」というのがありましたので、それでライドでは作業に入る前に「歴史物を作る感覚で作るはじめてのガンダムかもしれない」とは主要スタッフには言っていたんですよね。たとえば、宇宙空間に艦隊が何百隻も並べたいと思っても、史実と違うことはしたくない。ライドはそういうスタンスで挑みましたね。
ちなみに、『ガンダム・ザ・ライド』は冬場の方がすいていると思いますし、ジオン版のコーションテープとかザクのポスターとか新商品も続々出ていますのでよろしく。
■設定制作から見た『GUNDAM OFFICIALS』
- 「ガンダム・ザ・ライド」の制作中に『GUNDAM OFFICIALS』が出ていたら、たぶん「がたがた言わずにこの本の何ページを見たらいいんだよ」と言っていたでしょうね(笑)。ただ、ファンのみなさんがこれをもって、逆に指摘されたりすると怖いですね。「なかったこと」にして作りました、というわけにもいかないでしょうし。
『∀ガンダム』のときは、富野監督が昔のものにこだわらずにやろうという基本コンセンサスがあったので、スタッフとしては過去のガンダムにはそれほど捕らわれずに一種自由にできたんですけどね。『0080』のときは初のガンダムOVAということで、今ほど細かくなかったというのが正直なところですね。スタッフ内ではもちろん過去の作品との整合性は検証しているんですけど、出淵さんがデザインしたザクとかGMも、作った当時はカメラの解像度が上がったらこういう風に見えた、くらいの軽い気持ちだったんですけど……いろいろと分類されてしまったのはご存じの通りで。
最近、ゲーム用のオリジナルモビルスーツの開発も協力しているんですが、フィルムになってしまうと説得力がついてしまうんですけど、ゲームだと「この時代にはこの技術はないはずだ」とか「これはジオンの流れをくんでいるからこうじゃないのか」とか大変なんですよ。もうモビルスーツだけで千種類以上存在しますから、それぞれに思い入れをもっている人があると思うんです。それだけのものを世にだしてきた責任があるんですよ。一担当者と一デザイナーの個人的な思いだけでオリジナルのモビルスーツを出しても、フィルムの持つ重みにはかなわないですし。そこで、いろんな人の意見を聞いて、たぶんこれならいいだろうという形を出していくシステムを私が関わってからやっています。客観的にガンダムってものを覚えている人たちの意見を全部反映してようやく一機のモビルスーツが作られるという、非常にしちめんどくさい作業。でも、たった一機のモビルスーツでも大変なんですから、この『GUNDAM
OFFICIALS』なんかは壮絶にすごいことだろうなと思いますね。本当に百科事典ですからね。だから、逆に頭から読み進めなくてもいいものですから、たとえば3年後に『ガンダム・ザ・ライド』に乗って、その連項目を引いたら「おお!」となるかもしれない。まさに一生楽しめる本になっているんじゃないですかね。多分、これからも新しいガンダムが生み出されていくと思いますが、そのとき作り手の過去の思い入れを測るゲージとしてもいいんじゃないですかね。
文:池上隆之
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ほりぐち しげる
アルバイト扱いで『蒼き流星SPTレイズナー』の企画協力を機に、サンライズ作品に参加。OVA『宇宙の戦士』からは制作設定として。ガンダム関係以外では『獣神ライガー』『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』(バンク担当)『ママは小学4年生』『勇者指令ダグオン』『勇者王ガオガイガー』などに参加。現在はサンライズのライツ事業部ガンダム課と企画開発室・ガンダム担当を兼任し、ガンダム関連商品のチェックなどもおこないつつ次回作の企画作業をおこなっている。
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